大阪地方裁判所 昭和43年(借チ)15号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕しかして、本件資料によると、相手方三名は本件土地につき相当の賃料収入があげ得られれば、その賃借権譲渡につき異議のないこと、賃借権の譲渡先である瀬川義弘は申立人主張のとおり資力は十分で、相当賃料の支払能力は十分に備えていることが認められ、したがつて本件賃借権の譲渡によつて賃貸人である相手方に不利となるおそれはないというべきである。
その他、本件にあらわれた一切の事情を考慮しても、本件賃借権の譲渡許可を不相当とするような事情はうかがえないから、本件申立は右賃借権の存在の認められる範囲約174.5平方メートル(約五三坪)につきこれを認容すべきである。
そこで、附随処分の要否について考察する。
本件資料によると、賃借土地は国鉄塚本駅の東方約一〇〇メートルの地点で、塚本駅前通り商店街に面しており、駅前商店街の関係から本件土地の価格も高額で、更地価格は、3.3平方メートルにつき、鑑定委員会の意見書によると四三万円、相手方提出の鑑定書(乙第二号証)によると四五万円とされていること、申立人は当初の賃貸人である相手方三名の先代吉川新七に対し敷金および権利金等を差し入れた事実はなく、その借賃は昭和四二年四月一日以降一月七四〇〇円であつて相当賃料額に比し低額であること、申立人は従前本件借地上の別紙目録記載の建物で美容院を経営していたこと、賃借権の残存期間は約一〇年であること、申立人の本件賃借権譲渡の対価は右建物の対価と合せて約一七〇〇万円であることが認められる。
このように、賃貸借契約にあたり特別の金銭の授受もなく、借地権が形成され、その借地権を相当の価格を有するものとして第三者に譲渡し、これを賃貸人が承認しなければならないときは、その譲渡された借地権価額の一部を賃貸人に還元するのが衡平の見地からみて妥当であるから、財産上の給付を命ずるのが相当である。
そこで、前記事実と本件にあらわれた一切の事情を参酌し、鑑定委員会の意見(その要旨は別紙のとおり)をきいた上、財産上の給付として、申立人から相手方に対し金一五〇万円を支払わせることと定める。
つぎに、借地条件を変更する必要があるかどうかについて考えてみるに、従前の借賃は、その更地価格を基準にした利廻りやその他の経済的要因にかんがみると低額に過ぎるから、この際増額するのが相当と考え、乙第二号証その他本件にあらわれた一切の事情を考慮して一月一六、〇〇〇円(3.3平方当り約三〇〇円)に増額することと定め、その他の借地条件は変更しないのが相当であると判断する。(井上三郎)
鑑定委員会の意見要旨
一、本件土地の更地価格
3.3平方メートル当り四三万円
二、同建付地価格(更地価格の九割)
同 三八万七〇〇〇円
三、同借地権価格(建付地価格の七割)
同 二七万〇九〇〇円
四、承認料額 一二〇万円
五、承認料算定の根拠
承認料額は借地非訟制度施行の前後において相当の変化が認められねばならない。承認料の従前の慣行割合は、賃貸人の現実の承諾がない限り適法に借地権を譲渡する途がなかつたときの取引の積み重ねによつて生成したものであるから、当事者の力関係の不均衡によって、賃貸人に有利となる傾あり、借地非訟制度はこの傾向を是正することがその一つの目的であつた。それ故に従来の慣行上みとめられた承認料の借地権価格に対する割合一〇ないし一五%はこれを五ないし一〇%に引き下げるべきで、本件では権利金の授受がなかつたこと、過去に借地権の一部が無償で返還されたこと等を考慮して、右の割合を約八%とするのが相当である。尚、本件約定賃料は、やや低額であるが、本件においては使用目的の変更等特別の事情が認められないから、借地条件について付随の裁判は必要はなく、増額の事由が存するならば、借地法第一二条に従い、別途に増額請求すべきである。
目録
(一) 賃借権
賃借年月日 昭和二四年一〇月四日
存続期間 定めなし
目的土地 大阪市東淀川区塚本町二丁目二六番地の一
宅地1303.99平方メートルの内の180.08平方メートル(約五四坪別紙図面参照)
賃貸人 相手方三名
賃借人 申立人
賃料 一箇月金七四〇〇円(昭和四二年四月一日以降)
敷金 なし
(二) 建物
前掲地上
木造瓦葺二階建居宅兼店舗
一階 65.88平方メートル
二階 47.42平方メートル
木造瓦葺平家建居宅
床面積 49.65平方メートル